「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
「……ありがとうございます」

 差し出された手を取るも、心ごと預けて頼ろうとまでは思えなくなった。

 なにもかも許した時につらいのは自分だけだと、エレオノールにはわかっている。

「せっかくなので一曲だけダンスにお付き合いいただけませんか? これも万が一のためにしっかり叩き込まれたんですよ」

 エレオノールはジークハルトの大きな手を見つめて言った。

(この手を取るのは、今日で終わりにしよう)

 広間に流れる音楽に今さら気づいたようで、ジークハルトが軽く宙に目を向ける。

 そして肩をすくめてから胸に手を当て、エレオノールに向かって頭を下げた。

「一曲踊ってくれないか?」

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