「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 しまったと思ったエレオノールだったが、ジークハルトはその身体を危なげなく支えた。

「お前はいつも俺の前で転んでいるな」

「たまたまです……」

 エレオノールの頬が赤く染まる。

(初めて会った時もそうだった)

 徐々に音楽が緩やかになり、ほかの人々と同じようにエレオノールもジークハルトに密着する。

 鼓動が聞こえそうなほど距離が近い。

 顔を上げると、エレオノールだけを映す紫水晶の瞳があった。

(……ジーク)

 呼んでもいいと言われたから呼ぼうと思ったのに、唇から漏れたのは声ではなくかすれた呼吸だけだった。

(私には呼べない。……特別すぎて)

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