「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 いつか会うかもしれなかったが、その日は間違いなく今日ではなかったはずだ。

 苦い過去を懐かしめるくらい年を重ね、割り切れるようになってからなら、再会してもかまわなかった。

 勢いのまま飛び出したせいで咳き込んだエレオノールは、背後から聞こえた足音に向かって振り返る。

「ラス」

 息を切らしたジークハルトが、エレオノールを見つけて安堵の息を吐く。

 そしてすぐに自分も大理石の上に腰を下ろし、なにも言えずにいるエレオノールを抱き寄せた。

「事情は話さなくていいから、俺がいることを忘れるな」

 ジークハルトはエレオノールを抱き締め、落ち着かせるようにその背中を撫でる。

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