「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
(いっそ私のことなんて忘れていてほしかった)

 完全に他人だと思われていたなら、もう少し気持ちの整理もついただろう。

 心の準備ができていないまま、しばらく扱っていなかった名を呼ばれたせいで、こんなにも心を搔き乱された。

「ラス」

 すっかり乱れたエレオノールの髪をよしよしと撫で、ジークハルトが呼びかける。

 すがる先を与えようと差し出した手を握られ、ほっと肩の力を抜いた。

 しかしエレオノールは握ったばかりの手をほどき、ジークハルトから離れようと胸を軽く手で押しのける。

「せっかく、素敵なお召し物だったのに」

 エレオノールがしゃくりあげながら言った。

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