「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 軽く咳き込んでから再び深呼吸を繰り返すと、ようやく頬を濡らす涙が止まる。

「名前……聞きました、よね」

「……エレオノール?」

 話をしようと思ったのに、エレオノールは口をつぐんでしまった。

(さっき呼ばれた時と全然違う……)

 ジークハルトの唇から紡がれる音はとても甘やかで、エレオノールを特別な気持ちにさせる。

 本人にその意図がなかったとしても、今初めて、エレオノールは本当の名を呼ばれたのだった。

「それは私の……本当の名前です」

「ラス、ではないんだな」

「はい。……私の名は、エレオノール・レリア・ラフィエット」

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