「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 喜んでいる場合ではないが、ついにという瞬間だった。

 もうジークハルトにはすがるまいと思った矢先に、本当の名を明かし、呼ばれてうれしくなるなんてどうかしている。

 だがそれがエレオノールの嘘偽りない今の気持ちだ。

(ずっと呼ばれたかった。……好き、だから)

 いつの間にか芽生えていた想いがはっきりと形になったからこそ、与えられるぬくもりのひとつひとつが痛くてつらい。

(願ったところで、一緒に生きられる身分の人ではないのよ)

 自分に言い聞かせ、エレオノールはジークハルトの腕からそっと身を引いた。

「お見苦しいところを見せてしまいました。少し、ひとりになりたいです」

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