「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
「回復はしたが、指にうまく力が入らない。足も同じだ。こんな状態では満足に皇位を継ぐことなどできないだろう。……お前にしかこの国を託せない」

「……本当に、自分本位な人間しかいないな」

 不快感と嫌悪感が入り交じる中に、微かな寂しさが滲む。

「やれと言われたらやる。というより、やるしかないんだろう。だからこれ以上、俺を振り回さないでくれ。――帰ろう、エル」

「……はい」

 ジークハルトは部屋を出た後も、一度も後ろを振り返らなかった。



 ここしばらくの喧騒が嘘だったかのように穏やかなひと時が訪れる。

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