「役立たず」と死の森に追放された私、最強竜騎士に拾われる~溺愛されて聖女の力が開花しました~
 この場にいたとしても、エレオノールを抱き締めて家に帰ろうと言ってくれるはずはないが、それでも彼女が助けを求める相手は両親しかいなかったのだ。

 哀れなすすり泣きは、おどろおどろしい森から時折聞こえる獣や鳥の声で掻き消される。

 風に揺られる木々のざわめきも恐ろしく、ゆっくりと夕陽が沈んで暗くなるにつれ、小さなエレオノールの不安を煽った。

 やがて、少女が泣き止む頃にはすっかり陽が暮れていた。

「もう、帰れない……」

 しゃくり上げたエレオノールは、小さくつぶやいて森に向かって歩き出した。

 ――この森のことなら本で読んだから知っている。

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