『溺愛恋愛マイスターのポゼッシプ?!〜仔猫なハニーの恋愛偏差値〜』
彼女を、どんな些細な事であろうとも、丸ごと手に入れたいと日頃から…今までどんな女性と付き合っていた時よりも、色濃く願っている俺は、余計な心配事を作られ彼女が傷付く事を心の底から恐れているんだ。


「瑛飛さん…怖い」


そんな風に縋られたら、この腕の中に一生囲って閉じ込めてしまいたくなる。


俺の目を見て、不安がる彼女の髪を優しく撫でて、


「心配するな。絶対に守るから」


と、強く強く抱き締める。
そして、その言葉を聞くと心底安心したように、顔をほんのり赤くして、


「瑛飛さん、大好き」


なんて言ってくるからもう…堪らない。


彼女は、まだ俺のこの激重な愛情の深さを、一部しか知らないだろう。


「水美?キスしてもいいか…?」

「…ん」


何時もならば、そんな断りもせずに奪うようにして、掬い取る口唇。
けれど、今夜はどうしても彼女からの受け入れが欲しかった。


彼女から漂う甘い香りは、俺をどんな時でも甘美な世界の坩堝に堕としていく…。

たったそれだけで、満たされる。
それと共に…たったそれだけの事で、俺の細胞の全てが彼女を、もっともっとと求めて止まなくなる。


矛盾する、交差する、二つの感情。


それでも、それでも………。

彼女が俺を見つめていていてさえくれれば、いいと思っていたんだ。




「よし、じゃあこれで、完全に商品化への筋も決まった事だし、今日は解散!」

「わー!久々の定時だー!」



ぱん!



そんな小気味の良い合図の後の俺の号令に、課内の幾つかに別れていたプロジェクトチーム全員がホッとした顔をして、帰宅の準備に掛かった。


そこには当然、彼女の姿もある訳なのだが…、何か様子が違っている。
いや、明らかに何かがおかしい。


「どうした?久倉?」

「え…っ、補佐…あの、補佐は今日も残業です、か?」


挙動不審に彷徨く視線。
殆ど此方を見ない彼女。


これは、とすぐにピンとくる。
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