『溺愛恋愛マイスターのポゼッシプ？！〜仔猫なハニーの恋愛偏差値〜』

「もしかして、お前、」


その言葉を遮るように、彼女は俺の手を必死に、ぎゅうと掴んでその場から連れ去ろうとした。


俺は、されるがままに彼女の後を付いて行き、付き合う前は良く勝手に二人きりの空間を作る為に使っていた給湯室へと、向う。


「みな、っ」

「瑛飛さん！如何しよう…私、私…」


こんな風に社内の何時誰が来るかも分からない場所で、彼女が俺にぎゅうぎゅうと抱き着きてくる事に驚きつつも、俺は頼られている事に安堵する。


「ん。如何した？水美？焦らなくていいから。ゆっくり話して、な？」

「…っ。視線の相手、分かっちゃったの。さっき、用事があって受付の方に行こうとしたら、偶然…その人に声かけられて…っ」


フルフルと震える、顔を青白くした彼女に、ふつふつと抑えの効かない程の怒りが煮え繰り返るのを感じた。


「……そいつは、水美の知ってる奴？」

「…っ。昔、本当に一ヶ月くらいしか付き合ったことの無い、元カレ、だった…」


その言葉に、ぐらぐらと目の前が真っ赤に染まる。