『溺愛恋愛マイスターのポゼッシプ？！〜仔猫なハニーの恋愛偏差値〜』

「みーなみ。みーつけた。なんで逃げんの？」

「…ひっ」


その影は、駐車場に付いているライトに反射され、ゆらゆらとしているだけで、顔までは見え難い。

でも、彼女の怖がり方が尋常ではない事と、ねっとりと不気味に絡んだ声…。


「水美。大丈夫。俺の後ろに隠れて」

「…う、ん」


サッと彼女を自分の背後に隠すようにして、その声の主と対峙しようとすると、そいつはギラギラした目で俺を見た。


「なんだ？あんた。邪魔しないでくんね？俺が用あんのは、水美だけだからさ」

「残念だが、それは聞き入れられないな。それよりあまりにも不躾じゃないか？」

「ああ？なんだよ、お前。ムカつくなぁ。なーあ？みーなみ？早く其処から出て来いよー？俺等の仲じゃーん？」

「…っ」


ぎゅうっ


スーツがシワになる事なんか関係ない程、掴んでくる彼女の手。
俺は背中に隠れて怯える、彼女を更に隠すように動いた。


それが気に食わないらしいその男は、軽くチッと舌打ちをして、此方にやって来ようとする。


「彼女は、お前の所有物じゃないだろう？言いたい事があるなら、その場で言えばいい。大体君は彼女の過去の人間なんだろう？」


底辺を這うような、低い声が打ちっぱなしの駐車場のコンクリートに響く。

それに、一瞬たじろいたそいつは、わざとらしく溜息を吐いて、俺の地雷を踏み抜いた。


「元カレ…？ハッ、ふざけんな。付き合ってた、とか勝手に決めつけんなよ。俺は水美のことまだ愛してるし…。なんだって許し合った仲だろ？」

「…ぃゃ…っ」


俺の後ろで、精一杯拒絶をしている彼女に、心が軋む。