【完結】スキャンダラスな愛され契約～危険な魅力の幼馴染の愛は重い～

「じゃあ、まぁ、話すわ。……俺がこっちに戻ってきたのは、ある女優の所為だ」
「……女優？」

　なんか、予想もしていない角度からお話が始まった。

　そう思う私が眉を顰めていれば、瑛二くんは「多分お前も知ってる」と言う。

「細美(ほそみ)　逢彩(あいさ)。子役上がりの女優」
「……あ」

　その名前は、確かに私のようなレベルの人間でも知っている。

　一時期すごく持て囃されていたイメージがある。そして、しばらく低迷していたけれど、最近また人気を取り戻しつつあるという。

「あの女優、実はとある大グループの令嬢なんだ。芸能関係とか、出版関係とか。そういうのにも、強い」
「……へぇ」

　けど、それが瑛二くんの帰郷とどう関係があるのだろうか……と、思ったのだけれど。

「ねぇ、瑛二くん。……違ってたらごめん。なにか変なことに巻き込まれてる？」

　眉間にしわを寄せてそう問いかければ、瑛二くんは「あー」と呟く。明らかに、言葉を探していた。

「俺、その細美に気に入られてて。……自分と結婚を前提に付き合わないと、業界を使うって言われて」
「……え」

　なんだろうか。それって、かなりの横暴。権力を振りかざしているに等しい。

「ま、俺は別に俳優っていう仕事に未練はないし、別に業界にいられなくなってもいい。好きでもない女と付き合うくらいなら、干されてもいいって思ってた」
「……うん」
「でもさ。それって、色々な人が迷惑を被るんだよな」

　さも当然のようにそう言う瑛二くんの言葉に、私は胸が締め付けられるような感覚に陥った。