【完結】スキャンダラスな愛され契約~危険な魅力の幼馴染の愛は重い~
 そう思いつつ、私は店内の休憩スペースに瑛二くんを案内する。昔はここでよく一緒にお菓子を食べたものだ。

 ちなみに、出されたお菓子は形が悪い廃棄品。味は問題ないからと、お祖母ちゃんがよく出してくれたのだ。

「はい、どうぞ」

 コーヒーの入ったマグカップを瑛二くんの前に出す。その後、瑛二くんの目の前の椅子に腰かけた。

 私の分のコーヒーには、ミルクがたっぷりと入っている。私は苦いのはダメだから。

「ありがと」

 瑛二くんは淡々と礼を言って、コーヒーを口に運ぶ。

 ちらりと彼の衣服を見つめてみる。さすがは東京の品というべきか。ここら辺じゃ見ないほどにハイセンスな一品だ。

 ここら辺、京都でも辺鄙なところだし、そんなおしゃれな商業施設は市内に行かないとないし。

「……で、瑛二くんはどうしていきなり戻ってきたの? 零一くんに呼び戻されたって、言ってたけど」

 ミルクコーヒーをスプーンでかき回しつつ、私はそう問いかける。

 それから、息を吹きかけて、口に運ぶ。ほんのりと甘いミルクコーヒーは、まさに私の好みにぴったりだ。

「ちょっといろいろあったんだよ。……それで、どうせだしって兄貴がこっちに戻って来いって」
「ふぅん。お仕事は?」
「今は休んでる」

 彼はなんでもない風にそう言うけれど、なんだか変だなぁって思う。

 だって、瑛二くんはこう見えて真面目だし、お仕事を理由もなく休むことなんてないだろうから。

「そっか。……けど、いきなり現れるから驚いたんだけど」

 マグカップをテーブルの上に戻して、そう言う。瑛二くんは、少し気まずそうに視線を逸らした。

「まぁ、ほら、色々あるし」

 視線を逸らしたまま、彼がそう言う。……なんか、言いにくいことでもあるのだろうか。

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