【完結】スキャンダラスな愛され契約~危険な魅力の幼馴染の愛は重い~
「私、瑛二くんと結婚するなんて言ってないよ……」

 そんな堂々と「妻になる」なんて言われても、納得できるはずがない。

 だって、結婚だから。結婚というものは、一生がかかっているのだ。いくら気の知れた幼馴染だからと言って、それは明らかに一線を越えている。……簡単に答えを出せるようなものじゃない。

「……俺じゃ、嫌なの?」
「そういうことじゃないってば」

 ゆるゆると首を横に振って、淡々と返す。

「結婚って、幼馴染のよしみだけで出来るようなものじゃないでしょう」
「けど、お前、俺のこと好きだろ?」

 まるでさも当然とばかりに。自信満々に告げられた言葉に、私は顔に熱が溜まっていくのがわかった。

 ……いつの話だ、いつの!

「いつの話よ!」
「そりゃあ……十年以上前」

 それは、まぁ、うん。瑛二くんの言っていることは間違いないし、否定をする気もない。

 かといって、十年以上前のことを持ち出されて、困らないわけがない。

「それに、みつばにだってメリットがある。……俺が、ストーカーの奴を、けん制する」
「……どういう、ことよ」

 眉間にしわを寄せてそう問いかければ、瑛二くんはこくんと首を縦に振った。

「婚約者がいる。それを知れば、奴だって変に追いかけ回さないさ」

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