四番
お婆さんは素早く里依紗に杖を手渡した。
「来いよ?野良公、なめんじゃねーぞ」
里依紗が杖を構えながら言う。
お婆さんは私の横に来ると、私のことを無言で引き起こした。
犬が里依紗に襲いかかった。
「おらあっ!!」
里依紗が杖をフルスイングすると、犬の鼻先を捉えた。
短い悲鳴を発して、犬が地面に這いつくばる。
「おら!向こうへ消えろ!!」
二度、三度と黒犬を打ち据えると、黒犬は私達の前から逃げ出した。
「へっ、ざまあねえ」
里依紗は黒犬の姿が見えなくなるまで見てから、お婆さんにお礼を言い、杖を返した。