四番
「で?なにがあったの?」

里依紗が脚をくずして聞く。


「ある日のことだった。本当になんでもない普通の日だった。夕食が終わって消灯までの間の出来事だったんだよ。突然一人の患者が狂ったように叫びだすと近くにいた患者を襲ったんだ。まるで獣みたいに噛み付いたら殴ったり」

私と里依紗は黙って聞いていた。


「そのうち同じように発狂すると窓ガラスに頭を打ち付けたり自傷する者まで現れて、私達看護師は対応に追われた。そのうちどんどん、まるでウイルスが感染するように凶暴な患者が増えていって、収拾がつかなくなった。私達も救えるだけの患者をとにかく一人でも助けるので精一杯だったよ」


「やっぱりウイルス?」


里依紗が聞くとお婆さんは首を振る。


「病院の外からも同じように凶暴化した人が襲ってきた。普段知っている町の人だった。みんな狂ったように、目と鼻と口、耳から血を流して獣のように叫びながら私達を襲おうとした。助かったのはもう夜中になってからさ。急に暴れていた患者が全員倒れて動かなくなった。外から来た警察が倉庫に立て籠っていた私達に教えてくれたよ」


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