四番
「警察官が暴れていた患者を殺したとか?」

「いや。銃声みたいなものはなかった。とにかく急に静かになったんだよ。それまで外から聞こえてきた恐ろしい叫び声がぴたっと止んだんだ」

お婆さんは一旦、言葉を区切って言った。

「まるで地獄だったよ」

それが今、噂になって語られている事件の真実なのだろうか?

一晩で町の人が全滅したという恐ろしい噂。


「結局、原因みたいなものはわかったの?」

「いや。患者も町の人も凶暴になった人はみんな死んでいた。遺体は警察がすべて回収して 私達は簡単な検査をした後に決して口外しないように口止めされたよ」

お婆さんはお茶を一口すすった。

「ただ、原因はなんとなく見当がつく」

「なに?」

里依紗が身を乗り出す。

原因?人がいきなり凶暴になったり、それが感染するように増える原因なんてあるのだろうか?

私は唾を飲んだ。

外の風鈴がチリンと弱々しい音を立てた。

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