四番
「町の人は?」

「町と言っても、まばらに点在している民家しかなかったからね。上手いこと隠し果せたんだろう」

皮肉そうに笑って言った。


「その地下では何を研究していたのかわからないんですか?」

「ああ。ただ、一度だけ見たことがあるんだ」

「何を?」

「あそこにはおそらく患者がいたんだ。一度だけ、多分、地下で働いている医者だと思う。白衣を着ていたからね。その男と一緒に女の子がいるのを中庭で見たんだ。病院服を着ていたから患者には違いないけど、院内では見たことがない子だったよ。だからあの子はきっと地下にいるんだろうと思った」


「なんの病気とかは?」

「さあ。ただ、随分と幸せそうな顔をして中庭に二人で座っていたよ」


お婆さんは最後に付け加えた。

「ちょうど、今のあんたらと同じ年頃の子だったよ」

私と里依紗はその話を聞いて押し黙った。

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