四番
この距離で何を着ているか、どんな格好をしているのか全然見えないのだ。


さっきまでは、うっすらと学校の制服みたいな格好に見えたのに、今はただ黒くて影みたいで、輪郭しかわからない。


全身から汗が噴き出し、動悸がどんどん早くなる。


まずい!逃げろ!見てはいけない!

理屈でなくそう感じた私は短い悲鳴と一緒に咄飛び退いた。


「なに…?」


すると私の目の前にはスマホを持った仕事帰りっぽい女の人が怪訝な顔をして立っていた。


声もさっきまで聞こえていたものとは全く違う。


表情からは、不審な行動をとった私に対する警戒心がありありと見える。


「いえ…すみません…」私は恐縮して頭を下げる。


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