四番
女の人は呆れたように首を傾げると、スマホをバッグにしまって歩き出した。


あの人はただ立ち止まってスマホをいじっていただけだった。


それを私が勝手に怖がっただけという、なんとも情けないオチがついた話だ。



安堵とともに疑問が浮かぶ。


直前まで聞こえた声はなんだったのだろう?それに瞬間的に感じた、心の奥から告げるようなあの恐怖。

汗は引いているけどまだ動悸が激しい。


私が誤解したとはいえ、これほど恐怖が体に現れた記憶はない。

気味の悪いものを感じて、急いで家に入った。


「ただいまー!」


いつもよりも大きな声を出して家に入った。


するとリビングの方から、お母さんの返事が聞こえたことでほっとした。


脱いだ靴を揃えることもしないで、バタバタとリビングへ急ぐ。


ドアを開けると、お母さんがソファーに座ってテレビを観ていた。



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