四番
「電話いいのか?」


恭平が私に心配そうに聞く。


家に帰らないと。


「ごめん恭平。私から呼び出しておいて」

私は頭を下げると、前に垂れる髪をかきあげた。


修哉からの電話を切って、私は正気に戻ったような気がした。


今考えたら、なんだかさっきまでは熱に浮かれていたというか……


冷静な自分がいて、そうでない自分がいる。


まるで自分の中に異なる誰かがいるみたいな不思議な感覚だった気がする。



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