四番
恭平に何度も謝ってから急いで家に帰ると部屋へ駆け上がった。


ドアを閉めて乱れた呼吸を整える。


まずは恭平に電話しないと。


「はい」


「恭平、私」


「わかるよ。もう家に着いた?」


「うん。さっきはごめんなさい!変なこと言って困らせちゃって」


私は電話しながら頭を下げて謝った。


ほんとうに申し訳ないと思ったから。


「いいよ。気にしてないから」


あの時の私は、恭平がまるで私のことを好きだと決めつけて話していた。


そんなことあるわけないのに。さっきまでの自分に嫌悪感を覚えた。


「ほんとに?怒ってない?」


「ああ。ちょっと驚いたけどね」


電話の向こうの恭平は笑っていた。



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