四番
だが卓がどういった分野を専門に研究していたのか、大まかなことしか恭平にはわからない。


なぜなら卓は自分の、ある時期の研究資料のほとんどを焼却して命を絶ったからだ。


自殺だったが遺書のようなものもなく、理由は誰にもわからなかった。


ただ、亡くなる数ヶ月前はほとんど家から出ることはなかったという。


祖父から聞いた話では卓は障害を持つ人や寝たきりの人のサポート技術を研究していたらしい。


身内のことながら祖父も卓の生活や仕事のことはほとんど知らなかった。


離れて暮らしていたし、なにより二人とも多忙だったし、互いの仕事にあまり興味がなかった。


ある日、弟の死を知らされた祖父は青天の霹靂だったそうだ。


それから数年後に、卓の元同僚という外国人が彼から預かった日記を持って訪ねてきた。


自殺する前に国際便で届いたという。



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