四番
あのときの女の子は、もっとぼやけていて、どういう服を着ているかはっきりわからなかった。


しかし声だけははっきりと聞こえたし覚えていた。


今の夢の声も同じ声だ。


「君はうちの学校の子?」


制服を着ているのだから、少なくとも自分の記憶にある生徒かと考えた。


「そうね。そんなもんかな」


言ってから女の子はクスクスと笑った。


「名前は?君は僕のことを知ってるみたいだけど僕は君のことを全然知らない」


「名前なんてないわ」


「名前がない?」


「ないものはないの。別にもう興味もないし。それに私だってつい最近に知ったのよ。あなたのこと」


恭平は近付こうとしたが踏み出せない。



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