出会った彼は

「その…。涼太くんにさ、会った?」

「え?」


驚いて有村くんの方を見る。

「部長とあいさつ回りしてた時にさ、涼太くんに会って。七瀬どこにいるか知ってる?って聞かれたから。」

「あぁ、そういう事。うん、会ったよ。何も話さずに逃げちゃったけど。」

「そうなの?」

「うん、いろんな人がいた場所だしね。私は話す事ないし。」


有村くんの方を見ていた顔を、外の景色に向ける。

「七瀬はさ、それでいいの?」

「え?自分で決めたんだよ。いいに決まってるじゃん。」

そう言うと、涙が零れてきそうになる。


ダメダメ、こんなところで泣くな。

涙をこらえながら、別の話をして気を紛らわす。

気付いているのかいないのか、有村くんは何も言わずに付き合ってくれた。


家に着くころには程よくアルコールも抜けていた。
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