出会った彼は
そろそろ会場に移動するか。と思いながらデスクを立とうとすると。
「あ、あの…。七瀬さん…。」
後ろから震えた声が私の名前を呼んだ。
振り向くと、去年入社した後輩が気まずそうな顔でこっちを見ている。
「どうしたの?」
後輩はすごく申し訳なさそうな顔をして資料を差し出す。
「これ、○○商事に今日中にメールしなくちゃなんですけど、ファイルを送れなくて…。でも私これから歓迎会の幹事の準備で出なくちゃなんです。メールだけ代わりに送ってくれませんか?」
それはもう気まずそう、申し訳なさそうな顔で言ってくるし他の人はもう移動を始めている。
「いいよ。データちょうだい。やっておくね。」
「!!…ありがとうございます!今度ランチ奢ります!」
「そんなのいいよ、ほら行きな?」
パッと顔を明るくした後輩はすぐに会場へ移動していった。
メールメールっと。
あれ?この資料ってこんな感じだったっけ…?