出会った彼は

「いーよいーよ。今日はデートだよ?奢らせて。」

どうやら支払いはすでに終えていたらしく、グイグイと手を引かれて店を出る。

「ごちそうさまでした!おいしかったです!」


帰りがけ、目が合ったマスターにそれだけ伝えた。

外に出ても手は繋がれたままで、こんなのいいのかと思いながら涼太くんについていく。

「涼太くん、ごちそうさまでした。本当においしかった!」


伝えたかったことを伝えると、満足そうに笑う涼太くん。

「あの、いったいどこに?」

繋がれた手もそのままだし、誰かにばれてしまうのではとひやひやしている私とは反対に颯爽と歩く涼太くん。


「こっちこっち。」

店を出てからずっと路地を歩いていたけれど、着いたのは駐車場。

慣れた足取りである一台の車の前で立ち止まり、鍵を開ける。


助手席の扉を開いてくれて

「乗って。」

と言ってエスコートしてくれる。
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