出会った彼は
電話を終えた涼太くんが戻ってくる。
「帰ろっか。」
少し微笑んで私にそう伝える。
帰りの車の中は、最初こそ2人とも静かだったけれど少し経つとどちらからともなく話し出して気まずさや重い雰囲気にはならなかった。
「家、この辺?」
この後急に仕事が入ったという涼太くんに、どこかの駅まで送ってもらえればあとは自分で帰ると伝えたけれど送らせてと言われて結局家の辺りまで送ってもらってしまった。
「うん。もうこの辺りだから大丈夫。」
お礼を言って、車を降りる。
さっきの海での出来事は2人とも話さなかった。
きっと涼太くんもなかったことにしようとしているだろうし、いつもは行かない海なんて場所でお互い雰囲気に流されそうだっただけ。
「また連絡する。」