日常を返せ!
 母の言葉にぶっきらぼうに言う犬飼刑事に、飛口刑事が割り込む。

「すみません。目が覚めたばかりで申し訳ないのですが、事件解決のご協力をお願いいたします」

 そう言って飛口刑事はペコペコとわたしと母に頭を下げる。

 そんな飛口刑事の態度が気に入らないのか、犬飼刑事が小さく舌打ちをしていたが、聞こえなかったことにした。

 これ以上グダグダと言われるのが嫌だったので、わたしは嫌々従うことにした。

「分かりました。手短にお願いします」

「話が早くて助かるな。では、新田さん。貴女はどうして、被害者の田山香月のアパートに訪れたんだ?」

「わたしたちは例の複数誘拐事件の被害者です。その内の玉木が殺されたことに怯えた彼女を宥める為に、アパートへ行きました。彼女は一人暮らしだと言っていたので、しばらく泊まってほしいと彼女からお願いされました」

「つまり、田山さんは自分の両親ではなく、会ってまだ数日の新田さんに助けを求めたんですね」

「はい、そうです」

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