日常を返せ!
「うーん、明良には難しいと思うから、やめたほうがいいよ」

「そうね。時間が経てば明良に説明出来るから、それまで待っててよ」

「分かったよ」

 本当は二人の話題について詳しく知りたかったけど、これ以上聞いても喋らないと思って別の話に花を咲かせた。

 しかし、最寄駅に近付くにつれ、なんだか気持ち悪くなってきた。

 電車に乗るまではなんともなかったのに、今は頭痛と共に眩暈、吐き気が襲ってくる。

 頭全体に響く痛みに耐えきれず、わたしはその場に蹲った。

「え、明良⁉︎」

「どうしたの? 顔真っ青だよ、大丈夫?」

 あかねたちはしゃがんでわたしの顔色を伺う。

「ごめん、頭痛くて、気持ち悪い……」

「次の駅で降りて休もう。それまで我慢出来る?」

 あかねの問いにわたしは小さく頷く。

 口を開くと大変な事になりそうだから。

 電車の振動と乗客の声や生活音に敏感になり、ますます気持ち悪くなる。

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