日常を返せ!
 次の到着駅がアナウンスされ、電車がゆっくり停車すると、あかねたちがわたしの両脇を抱えて降ろしてくれた。

 すると、あれだけ酷かった頭痛がスッとなくなり、吐き気もなくなって。

「え、あれ……?」

「明良、まだ気持ち悪い?」

 急に消えた体調不良にわたしが首を傾げると、桃香が問いかける。

「それが、頭が痛くなくなったの」

「え? 吐き気は?」

「それも無くなった……」

「痛みの波が引いただけかも。念のため、近くのベンチに座っていて。わたし、飲み物買ってくるから」

 あかねはそう言って自販機に向かって走って行った。

 わたしは桃香に連れられてベンチに腰掛ける。

 それからあの頭痛や吐き気が襲ってくることはなかった。

「明良、痛む?」

「ううん。全く」

「ストレスが溜まって体調崩したんじゃないの? 誘拐事件と殺人事件とかで疲れてたんだよ」

 そう言ってあかねが水の入ったペットボトルを差し出した。

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