日常を返せ!
 わたしはその場で改めて部屋を見回す。

 部屋は全体が真っ白でだだっ広い。

 どこか施設の大ホールみたいな印象を受ける。

 ただ、部屋には窓らしきものが見当たらない、いや窓だけでなく扉もどこにあるのか分からない。

「扉がない……?」

「何言ってんだ。あそこにあるだろ」

 わたしの呟きに玉木が呆れつつある場所を指差す。

 その先には中川と石井が壁を叩いている。

 わたしが彼らに近付くと、彼らが叩いているのは壁ではなく自動ドアだったことに気がつく。

 壁と同じ素材で出来ているため、一目では気づけなかった。

「駄目だ。全然反応しない」

「っていうか、こっちにセンサーがないのはおかしいでしょ⁉︎」

 石井の言葉にわたしは上を向くと、本来ある感知センサーがどこにも見当たらない。

 扉の横に四角い機械があるが、ドラマでよく見るカードキーをかざして開ける物のように思える。

< 16 / 296 >

この作品をシェア

pagetop