日常を返せ!
「そうだね」

 羽間はスマホで植本と連絡を取り合う。

 しばらくスマホを見ていたが、羽間はパッと顔を上げてわたしにスマホを向けた。

「取り壊し途中の工事で立ち入り禁止の場所があるから、そこはどうかって」

 スマホには地図アプリが起動していて、赤いピンである建物をチェックしている。

 どうやらそこが取り壊しの場所らしい。

「取り壊し途中の工事現場? どうしてそんな場所を選んだのよ」

「わたしたち、どこに行っても注目される状態でしょう? この場所なら工事現場に誰が来てもすぐ分かりますし、外に出れば人通りがあるので助けも呼べます」

「なるほど。じゃあ、そこで話し合いをしよう」

「では、全員のチャットでそう伝えますね」

「うん、ありがとう」

 準備をしてくれる羽間にお礼を言って、疲れたわたしは目を閉じた。
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