日常を返せ!
「ここに何かをかざさないと扉が開かないみたい」

 わたしが機械の存在を二人に知らせると、二人は揃ってしかめっ面をした。

「あー、そうみたい。他はどうなってんの?」

 石井がそう言って振り向くと、何かに気付いたのか急に走り出した。

 ちょうどわたしたちと反対側の壁を、羽間と植本が触っている。

「そっちにも自動ドアあった⁉︎」

「は、はい。ありましたけど……」

「こちらも開きませんね。どうやらカードキーが必要です」

 石井の勢いに気圧される間と困ったように植本が答える。

 こちらと同じような機械が自動ドアの横に設置されていて、それ以外に開ける方法がない。

 それから全員で部屋をくまなく探したが、二つの自動ドア以外何もない。

 上を見ても埋め込み式のLEDライトがわたしたちを照らすだけだった。

「これ、本当に大変なことになってるんじゃないの?」

「そうだよな。窓もない密室に閉じ込められているし、俺たち誘拐されたのか?」

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