日常を返せ！

悪夢と現実

「…たさん、起きてください」

　誰かが声を掛けながらわたしの体を揺さぶる。

　ゆっくりと瞼を開くと、羽間がわたしの肩を揺らして起こしていた。

「新田さん、起きてください。時間になりましたよ」

「あ、れ？　羽間、生きてる？」

「どうしましたか？　悪い夢でもみましたか？」

「夢……？」

　羽間に言われて先程の事が悪夢だと知って、大きく息を吐きだした。

　そうだよ、田山は拳銃で殺されてないのは実際に見たんだから、全員拳銃で殺されたことはおかしいんだ。

　現実との矛盾に気付いて、胸を撫で下ろしたが近い未来にこうなるかもしれないと思うと気分が沈む。

「新田さん？」

　わたしが黙り込んでしまって心配そうに羽間が覗き込んだ。

「ごめん、時間だったよね。行こうか」

　悪夢のせいであまり疲れが取れなかったが、それを振り払うように大きく伸びをする。

　スマホの時計を見ると授業は終わり、放課後になっている。

　わたしと羽間は空き教室から出て行くと、植本が指定した工事現場へ向かった。
< 173 / 296 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop