日常を返せ！

　そこには材木の下敷きになり、頭から血を流している石井の姿があった。

「石井！」

　わたしは材木を手に取ると、すぐに石井からどかし始める。

　幸い材木はわたし一人でも動かせる重さで、早いうちに石井を救出することが出来た。

「大丈夫⁉︎」

　一番近かったわたしが石井の体を材木から離す。

「わたし、救急車呼んできます！」

「は？　どうなってんの？」

　三人で石井を救助している傍ら、中川が現状を理解できなくて間抜けな言葉を口にして突っ立っている。

　そんな中川の方を石井は呆れと愛しさの混ざった視線を送り、ほんの少しだけわたしに顔を向けた。

「もう、誰でもいいや。星矢のこと、よろしくね」

　そう言うと石井は目を少し開けたまま、そのまま動かなくなった。

「石井、石井‼︎」

　わたしたち三人が呼びかけても何の反応も示さない。