日常を返せ!

亀裂

 到着した救急隊が診察をし、蘇生は無理だと判断すると、警察が現場検証を始めた。

 わたし達はパトカーに移動し、警察に事の経緯を説明した。

 警察の中に犬飼刑事と飛口刑事も一緒にいて、わたしを見つけると、犬飼刑事はさらに険しい顔をして近づいて来た。

「またお前か」

「どうも」

 眉間に皺を寄せて睨む犬飼に、わたしは小さく頭を下げた。

「何でこんなところにいたんだ」

「話し合いをしてたんです」

「こんなところでか?」

「わたしたち、色んな意味で有名ですから」

「こんな人気のない場所で何の話し合いだ?」

「それは……」

 口籠るわたしに庇うように植本が犬飼の間に入ってきた。

「高校生複数誘拐事件の僕たちが次々と殺されていることです。……その結果、新たな被害者が出てしまいましたが」

 最後は視線を下に向けて、死んだ石井を悲しんでいるようだった。

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