日常を返せ！
　わたしは青のビニールシートで隠されている石井の側にしゃがみ込んでいる中川を見る。

　あれだけ泣き叫んでいたのに、救急隊が助からないと分かると現場保存の為にビニールシートを被された途端、ビニールシート越しにある石井を見つめたまま動こうとしない。

　刑事の人にも邪魔だと中川を石井から離そうとするが、その度にビニールシートごと石井にしがみ付くからどうしようも出来ない。

「彼女が亡くなりましたからね。しかも、中川くんが石井さんを押したから材木が倒れましたし……」

　羽間の言う通り、あの時中川が石井を押さなければ材木が崩れることはなかった。

　いくら腹を立てたからって、彼女を突き飛ばすのもどうかと思うけど……。

「お前たち、今日はもう帰っていいぞ。話はまた後日聞くから」

　飛口刑事との話が終わった犬飼刑事はわたしたちにそう告げる。

　中川以外は頷き現場から出ていこうとする。

「ほら、きみも帰りなさい」

「……嫌だ。俺はルリカと一緒にいるんだ」

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