日常を返せ!
「彼女はこの後司法解剖に回される。解剖結果を聞きにくるか?」

「何を言ってるんだ? ルリカは眠ってるだけだろ? さっきから無理矢理ルリカから引き離そうとしているし、どういうつもりだ?」

 話しかけてきた刑事の襟首を掴み、中川が睨みつける。

 そのまま手を出しそうな勢いの中川を植本が羽交い締めで止める。

「中川さん、やめてください!」

「離せ! お前もあいつとグルか⁉︎ 訳の分からない事を言って、俺をルリカから離そうとして!」

 石井を亡くしたせいで気が狂ったのか、中川はまるで石井がまだ生きているかのように話している。

 植本のおかげで中川の手から離れた刑事が距離を取り、他の刑事に告げた。

「あの少年が離れたから、遺体を運ぶぞ」

 その言葉を待っていたのか、数人で担架を用意し青いビニールシートごと石井を乗せて運んで行く。

 その様子に中川が両腕を振り回して植本から逃れ、担架を持つ刑事の腕を掴んだ。

< 186 / 296 >

この作品をシェア

pagetop