日常を返せ!
「やめろ、ルリカをどこに連れて行くんだ!」

「きみもいい加減目を覚ましなさい。彼女は亡くなったんですよ」

「そんなわけない、ルリカは寝ているだけだ。呼んだらすぐに目を覚ますから」

 そう言って中川は他の人の制止を聞かずにビニールシートをめくった。

 石井は確かに目を覚ましていた。

 いや、それは目を見開いたまま死んでいたからに過ぎない。

 その証拠に石井は虚空を見つめ、中川とは目を合わせていなかった。

「ルリカ、目を覚ましたんだろ? いつもみたいに星矢って呼んで飛び込んでこいよ」

 中川はそう言うが、石井からの反応はない。

「ルリカ‼︎」

 石井の態度に中川が肩を揺らすと、重力によって横を向いた。

 それは中川とは反対の方向となり、そっぽを向いているようにも見えた。

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