日常を返せ!
 犬飼刑事と同じようにデスゲームの事を話したら、母は絶対にわたしを守ろうとする。

 それと同時に母もデスゲーム側の手立てで殺されるかもしれない。

 母も失うかもしれないと思っていたら、背筋がゾッと冷える感覚がした。

 いつもは口うるさくていなくなればいいのに、って思うことが何度かあった。

 でも、こうして殺されるかもしれない状況になると、失いたくないと心の中で叫んでいる。

 わたしは不安や恐怖を必死に堪えて、泣き崩れている母の手に自分の手を重ねた。

「大丈夫、わたしは大丈夫だから」

 何が大丈夫かわからないし、デスゲームを勝つ為の勝算もない。

 でも、こう言っていないとわたしも母も奮い立つことが出来ない。

 わたしは母が泣き止むまで繰り返し「大丈夫だから」と呟くのだった。
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