日常を返せ！
「分かったけど、先頭はわたしが行く。これは譲れないから」

「うん。気をつけてね」

　あかねが慎重に階段を降りていき、続けてわたしと桃香が一列になって一階まで辿り着いた。

　全員が降りてからあかねが一階の廊下に顔だけ覗かせる。

　すると何か言おうとした自分の口を塞いで、すぐに見るのをやめた。

「どうしたの？」

「見たら分かるけど、絶対に叫ばないで」

　あかねの驚いた顔に小声で尋ねると、同じく小声で廊下に指を差して答える。

　わたしと桃香がそっと廊下を覗くと、目に入った光景に息を呑んだ。

　廊下には中川が逃げようとした生徒を襲ったのか、もしくはわたしと勘違いして襲ったのか、負傷している生徒が複数人いた。

　壁にもたれかかって腕を抑えていたり、太ももを切られて廊下でうずくまっている人もいる。

　一番酷いのは、廊下にうつ伏せに倒れていてじわじわと血で廊下を濡らしている生徒がいた。

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