日常を返せ!
 そんな阿鼻叫喚の中、中川はゆっくりした足取りで廊下を彷徨っていた。

「おい」

「ヒィッ!」

 中川は恐怖で腰を抜かしている男子生徒の頭を掴んで、血塗れのナイフを顔に当てる

「新田と羽間がどこにいるか知らないか?」

「し、知らない! じ、自分たちの教室に、い、いるんじゃないのか?」

「チッ、使えねぇな」

 男子生徒が震えながら答えるが、役に立たないことにイラつきをみせ、ナイフで男子生徒の頬を切り裂いた。

「ああああああ!」

 男子生徒は切られた頬を両手で抑えて絶叫する。

 指の隙間から血が滴り落ちるが、中川はそんな男子生徒を気にすることなく、周囲を見回す。

「新田、どこだぁ? 羽間も一緒にいるんだろ、さっさと出て来いよ‼︎」

 腕や服をさらに血に染まった中川が叫び続ける。

 間違いない、わたしたちを殺しに来たんだ。

< 205 / 296 >

この作品をシェア

pagetop