日常を返せ!
 このまま走って逃げようにも、バレてしまう。

 どうしよう……。

「新田さん」

「わっ!」

「ひっ!」

「しぃー!」

 背後から声をかけられて驚くと、すぐに口元を覆われて静かにするように言われる。

 あかねと桃香がわたしの口を覆う人物の方に目を向けて睨んでいる。

 わたしが口元を覆った手から逃れようと剥がそうとすると、声がさらに続ける。

「わたしです、羽間です。新田さん落ち着いてください」

 小声で囁いた声が羽間だと分かり、暴れるのをやめて後ろを振り向いた。

 ようやく落ち着いたわたしに安堵する羽間に、わたしは廊下を指差した。

「いま、廊下に中川がいて、わたしたちを殺そうとしてる」

「そうみたいですね。さっきの叫びは聞きました。とにかく学校から出ましょう」

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