日常を返せ!
「羽間、大丈夫?」

「なん、とか……」

 わたしより体力がないのか、今にも倒れそうな羽間を横目で気にしつつ先を走る。

 もう少しで駅に着くところまで走ってこれた。

 あとは駅前にいるはずの植本に合流出来れば、なんとかなるはずだ。

「きゃあ!」

 助かるかもしれないと安堵していた時、遅れて走っていた羽間が悲鳴を上げて倒れる。

 すぐに後ろを振り向いて様子を見ると、つまずいたらしい羽間が膝から血を滲ませていた。

 早く逃げようと立ち上がるが、もう目の前には中川が羽間を見下ろしていた。

「あ……」

「お前らの誰かがルリカを殺したんだろう? 誰だよ」

 中川は焦点の合っていない目をしながら羽間の肩を掴む。

「違う、わたしは石井さんを殺していない」

 羽間が今にも泣きそうな目で首を横に振るが、中川はハッと鼻で笑う。

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