日常を返せ!
「電車に乗れば僕から逃げられると安直に考えたんでしょう? ご愁傷様。僕も乗車しましたから作戦は失敗ですね」

 そうわたしに言った後、羽間の方に視線を向けて、爽やかな笑みを浮かべる。

「羽間さん。新田さんの次は貴女ですからね。これで一億円は僕の物だ!」

 自分が勝ったと喜んでいる植本だったが、次第にその顔に曇り出した。

 何かの痛みに耐えるような表情でこめかみを押さえ始めた。

「なんだ、これ。うっ……」

 植本は突然の痛みに困惑し、吐き気もあるのか口元も覆い出した。

 植本は頭痛と吐き気に混乱しているが、わたしも同じ痛みを受けていた。

 でも何度か受けた痛みなので、状況を冷静に見ることができた。

 この電車は市外行きの電車だ。

 以前、羽間と試したペナルティを使って植本を殺すつもりだ。

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