日常を返せ!
 わたしは駅のパネルを見て、次の駅で降りなければいけないことを知る。

 隣にいる羽間もわたしの意図に気付いているようで、両手で頭を抱えつつも出口の方に体を預けていた。

 これで三度目になるが、やっぱり気持ちが悪い。

「ははっ、作戦通りね」

「痛い、痛い。うぇ……」

 植本は頭を抱えて悲鳴をあげる。

 ナイフが自分たちから他所へ向きを変えた事を見逃さず、痛みに耐えながら植本に駆け寄る。

 よろめく植本から持っていたナイフをはたき落とすと、電車の振動でナイフは植本から滑るように離れていく。

「お前、よくも!」

 わたしに怒鳴る植本だが、そんな彼の腕を掴んでポケットからある物を取り出した。

 冷たい金属の感触にドラマで見たやり方を思い出しながら、それを植本の腕に押し付けた。

 カシャリと音を立てて金属の一部が一回転して植本の腕を拘束する。

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