日常を返せ!
「……分かりました」

 わたしは校長に深々と頭を下げて、冷たい視線を向ける教師たちから逃げるように、校長室を出て行きました。

 正面玄関までの道は何人かの生徒とすれ違いました。

 誰もがわたしを見ては小声で囁き合っているのです。

 普段喧騒ならかき消される音量なのですが、いつもより静かな廊下にはよく響いていました。

「ねぇ、あの子でしょう?」

「そうそう。本屋で万引きした子。よく学校に来れるよね」

「さっき先生たちと話しているのを聞いたけど、アイツ反省なんてしてなかったよ」

「何それ、最悪〜。早く退学になればいいのに」

「無理無理。学校側は退学にすると体裁が悪くなるから、自主退学にさせないとダメだよ」

「えー、それまでわたしたちが我慢しないといけないってこと?」

「じゃあさ、あいつが辞めるように仕向けるのはどう?」

「あはは。いいね。アイツの情報はもう出回っているから、わたしたちが何かやっても気づかないよ」

 わたしに聴こえていないと思っているのか、一部の生徒はそう言ってクスクスと笑っている。

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