日常を返せ!
 ニヤリと嫌な笑みを浮かべる男に、事実を知っていながらこの場を引っ掻き回したいことに気付いた。

 現にわたしの周囲はデスゲームの事なんて知らずに、わたしが殺したと思って距離を取っている。

 遠巻きでヒソヒソと小声で話しながらわたしと主催者にスマホを向けている。

「さて、新田様はこのデスゲームについての本当のルールも自分の配役の詳しい情報もご存じないので、特別映像と共にご説明いたします」

 主催者がそう言うとディスプレイが切り替わり、教室が映された。

 そこはわたしのクラスの教室で、あかねや桃香も映っているが、わたしの姿が見当たらない。

「なに、これ?」

「まあ、見ていれば分かりますよ」

 困惑するわたしに主催者の声だけが映像から聞こえるが、すぐに映像の音だけとなった。

 クラスメイトたちはザワザワと雑談をしていたが、チャイムの音と共に佐藤先生が入ってきた。

 佐藤先生は神妙な面持ちで脇にノートパソコンを抱え、教室にあるプロジェクターに繋ぎ始めた。

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