日常を返せ!
「玉木、登れるか?」

「時間を掛ければなんとか……」

「先にわたしが登る。上に行って何も問題がなければ声を掛けるから」

 わたしはそう言うと梯子に手を掛ける。

「新田さん、気をつけてください。もしかしたら、上に仮面の男の仲間がいるかもしれません。慎重に登って、何か異変を感じたらすぐに引き返してください」

 玉木に肩を貸している植本が気にかけてくれたので、わたしはますますやる気が出た。

 わたしは力強く頷くと、梯子に手を掛けて登り始めた。冷たいステンレスの感触を感じながら、落ちないように一歩ずつ登っていく。

 光は徐々に大きくなり、梯子の最後に手を掛けると頭に何かがぶつかった。

 ぶつかった物に片手を伸ばすと、板のようなものに触れる。

 上の方に耳を澄ませても、人がいるような気配はない。

 わたしは注意深く頭の上の板を押し上げてみた。

 その板は思ったよりも軽く簡単に上がり、半分開くと動かなくなった。

< 37 / 296 >

この作品をシェア

pagetop